「持久力を伸ばす」練習内容と効果についての考察(後編)

トレーニング研究


前回の続きです。
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筋持久力

筋持久力とは

「筋持久力」は、ある特定の筋肉を長く動かし続ける筋力です。
「ある特定の筋肉が、血液を介して到達した酸素を取り込んでエネルギーを生み出し、繰り返し収縮し続ける能力」と言えると思います。

「筋肉の耐久性」という意味でも使われることもあるでしょう。「筋肉を使い続けても疲労状態に陥るまでの時間が長い」または「疲労状態になっても動かし続けられる時間が長い」ということです。フルマラソンで言うところの「脚持ち」がこれに当たると思います。

筋持久力は、同じ筋肉を使うスポーツでは共通することもあるでしょうが、全く違う筋肉を使う場合はそれぞれ鍛える必要があります。

 

筋持久力を高めるには

筋持久力を高めるには、筋肉に酸素を取り入れながら刺激し、時間をかけて「限界まで反復する」ことが最も有効であると言われています。それにより限界が伸びていきます。

「有酸素運動の範囲」
「長時間」
「オールアウト」

がキーワードです。「持久力練習」というと淡々と長く続けるイメージがありますが、必ずしもそうではないですね。淡々と長く続けるだけでは、オールアウトに持っていくのは相当長い時間続けないといけません。

ビルドアップ走が持久力を高めるのに有効といわれるのは、無理なくオールアウトに持ち込めるからであろうと思います。

 

筋持久力に優れる筋肉タイプ

筋持久力には筋肉のタイプが関わります。

筋肉には、「赤筋(遅筋)」と言われる「ゆっくりしか動かせないが長く動ける」性質の筋肉と、「白筋(速筋)」と言われる「速く動かすことができるがすぐに動けなくなってしまう性質の筋肉があります。

身体の赤筋白筋の割合は遺伝子レベルの生まれつきのものですが、運動によって白筋(速筋)の遅筋化を進めることができることが分かってきました。(ピンク色の「中間筋」に変化する)
持久系スポーツでは、短距離走やスプリントレースなどで使われる白筋(速筋)を使うことは稀で、より長く動かせる赤筋(遅筋)化を進める方が有利であると考えられます。

赤筋(遅筋)の性質として、
・酸素結合性たんぱく質のミオグロビンが多く含まれ、酸素を貯蔵する能力が白筋より高い
・脂肪分解酵素のリパーゼが多く含まれ、運動時に脂肪を分解してエネルギーに変えられる
・エネルギー産生を行うミトコンドリアが多く、多くのエネルギーを作り出すことができる
・白筋と比べ、加齢によって能力が低下しにくい
・白筋と比べ、維持するために必要なエネルギー量が少ない
などがあげられます。まさに持久系スポーツのための筋肉タイプと言えます。

赤筋(遅筋)化を進めるためには、筋肉を刺激しながら多くの酸素を取り込める運動をすることが有効とされています。つまり、そのスポーツで使う筋肉をまさに動かしながらの高すぎない負荷の有酸素運動が有効というわけです。

だからといって、強度の高い運動をすればたちまち白筋(速筋)化してしまうというわけではありません。白筋は、強く速い動きによって鍛えることができますが、それは3分や5分継続できる動きではなく、概ね8秒以内に使い切る非常に高い強度の運動です。1㎞のインターバル走や5kmTTなどの練習が影響するものではありません。つまり、スピード練習のような高強度練習によって白筋化が進む(=持久力が下がる)という可能性は低いでしょう。

問題は、練習そのものではなくそのダメージの大きさ、回復に要する時間にあるのではないでしょうか。次で解説します。

 

筋持久力を低下させてしまう要因

持久力を低下させる要因には以下のようなものが考えられます。
・疲労状態から十分に回復しないまま次のトレーニングを実施する(回復不足)
・疲労状態を回復させるに十分な栄養が不足している(栄養不足)
・一定期間以上のトレーニング休止

高強度練習は、中低強度の運動よりも筋損傷が大きく回復に要する時間も長くなります。そのため、高強度練習を取り入れた場合には取り入れる前よりも練習頻度を下げる必要がありますが、それをしなければ回復不足により持久力を低下させてしまうことがあり得るということです。また、十分に休養を取り練習頻度を下げた結果、持久力を高める長時間の有酸素運動が不足し、思うように持久力が上がらない、ということも考えられるでしょう。
つまりは、バランスが重要だということです。

なお、筋持久力を高めるに最適な「オールアウトさせる」運動を行った場合、一般的には24時間で回復させることはできません。筋持久力を高めようと毎日同じ部位をトレーニングしていると、筋持久力はむしろ低下していくと思われます。

 

もう一つの「筋持久力」の定義とその鍛え方

また、「筋持久力」は、スポーツの世界においては「一定の負荷をかけて」動かし続けるという意味でも使われているのではないかと思います。(ニアリーイコール「スピード持久力」)

「一定の負荷をかけて単位時間動ける筋肉持久力」は、持久系スポーツの中でも比較的短い時間のレースや、より高いレベルの選手に求められる持久力であると思います。LT、OBLAなどの指標で表すことができ、血中乳酸濃度が上昇する運動強度の高さや、乳酸の処理能力に関わってきます。

・LT(Lactate Threshold/乳酸性作業閾値)
運動強度を上げていったときに、あるところから乳酸の産生に消費が追い付かなくなり、血液中の乳酸濃度が急激に上がります。その閾値のことをLTと言います。
脂肪を酸化させてエネルギーを作り出す場合は乳酸は産生されません。LTを超えるあたりから脂肪より糖の分解が進み、乳酸は消費よりも産生の方が多くなります。

・OBLA(Onset of Blood Lactate Accumulation/血中乳酸蓄積開始点)
LTが概ね血中乳酸濃度2ミリモルであるのに対し、OBLAは4ミリモルとそれよりも高い値にあります。この強度の運動は、通常15分~30分程度しか維持することができませんが、高度なトレーニングを積んだ選手はより長時間の競技でもOBLAの強度で運動し続けることができるようになります。

なお、これらに対しAT(Anaerobic Threshold/無酸素性代謝閾値)は酸素供給能力を含む機能を評価しており、全身持久力を評価する指標であると考えられます。

筋肉に高い負荷をかけて維持することで、その負荷下の運動の継続時間が長くなったり運動強度が下がるという効果が得られます。そのため、持久系スポーツにおいてもLT前後の強度の運動を推奨している指導者・指導書が多いようです。

また、LT超の強度においては短い時間で限界に達する(使い切る)ことができるため、これを利用すれば「長時間の有酸素運動で最後にオールアウト」を作り出すことができます。ビルドアップ練習で、最後に20分程度LT強度の練習をすることにより、効果的に筋持久力を向上させられると考えられます。

 

「持久力を伸ばす」練習内容とは

2回に分けて、持久力とは何か、持久力を高めるには、ということについての考察を行いました。また、高強度練習が持久力に与える影響についても整理ができたと思います。

以上のことから、持久系スポーツのアスリートが持久力を伸ばすために行うとよいトレーニング内容としては、

・練習時間に応じた低中負荷の全身運動で全身持久力を鍛える(競技別である必要はない)
・高強度のインターバルで心肺に強い負荷をかける(必須ではない、また競技別である必要はない)
・高すぎない負荷で鍛えたい筋肉を刺激しながら酸素を取り込んで長時間運動し筋肉を使い切る(競技別が望ましい)
・競技レベルや競技時間に応じた高い負荷の運動で筋肉の耐性を高める(競技別が望ましい)

とまとめられると思います。
もちろん、トレーニング毎に十分に回復させること(栄養・休養)が絶対条件となります。

 
以上です。一意見としてご参考頂ければと思います。お読み頂きありがとうございました。
疲労回復についてはこちらもご参考下さい。
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纏めながら、「ああ、練習スケジュール、考え直そう・・・」と思ったオカンでした(笑)

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