TTB解説(7)トライアスロンのシーズン計画を作成しよう(前編)

トライアスリートトレーニングバイブル解説 トレーニング研究

第7回、シーズン計画の作成についてです。

1年の計は元旦にありと言いますが、元旦とは言わずとも1月中にその年のトレーニング計画を立てている人は少ないのではないでしょうか?

レースの目標を達成したいのであれば、トレーニング計画はレースを基点に逆算して作成するべきです。トライアスロンは6月~8月がメインシーズン。レースのために順を追ってトレーニング計画を立てていくと最低6か月の計画となります。年末年始がちょうどいい計画時期なのです。

この、「レースを基点に逆算して」その時育てるべき能力に特化してトレーニング期間をブロック分けしていく方法を、「ピリオダイゼーション」といいます。「ピリオド(期間)に分ける」という意味だと思ってください。日本語では「期分け」と呼ばれます。

期分けにも色々なパターンがあります。Triathlete’s Training Bibleではまず最も一般的な方法を解説し、別の章で別パターンも解説しています。ここでは一般的なリニアピリオダイゼーションを使ってトレーニング計画を作成してみます。

 

計画を立てる前に

実際に計画を立てていく前に、必要な概念を理解しましょう。最初の方に出てきた「トレーニングは一貫して行う」「トレーニングは徐々に構築していくべき」ということを思い出してください。

身体の変化には時間がかかります。より高いレベルの体力になるには、急激に引き上げるのではなく自然に向上するのを待たなくてはいけません。

また、計画は柔軟であるべきです。立てた計画を何が何でもこなそうとしてはいけません。疲労が大きい時、生活や仕事で時間が必要な時、調整していいのです。柔軟な計画こそがレース成功のカギです。

そして、トレーニングはレースに向けて進化させていく必要があります。レースが近づくにつれ、レースの目標に特化したトレーニングにしていくべきです。目標レースペース、本番コースに近い練習環境や気象環境に身体を慣らしていきます。

 

トレーニングの期分け

このトレーニングの進化は、第6回で説明したアビリティに基づいています。基礎能力(有酸素持久力、筋力、スピード技術)から、応用能力(筋持久力、無酸素持久力、瞬発力)に、特化して練習することを進化させていきます。

基礎能力に特化した期間を「基礎期」、応用能力に特化した期間を「強化期」と呼びます。(英語では、Basic、Build)

この他、基礎期の前に「準備期」、強化期からレースの間にある調整期間の「ピーク期」、そしてレース週の「レース期」、レースが終わって次のレースに移行するための「移行期」があります。

あなたのトレーニングシーズンをそれぞれの期に分けていきましょう。

 

年間トレーニング計画(Annual Training Plan/ATP)のテンプレート

さあ、シーズンの計画を作成しましょう。

紙ベースでやるなら、第4版のP262-263にあるテンプレートをコピーして使います。第3版はP539にありますが小さすぎて使えませんね~(^^;

Excelならこのようなテンプレートになります。
大きな画像で載せておきますので印刷して書き込むのに使ってください。もしくはExcelで同じように作ってデータを書き込んでいきます。(36週以降はご自分で作って下さいませ)

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Training Peaksを使えば自動的に作ってくれますが、まずは勉強のために自分で組んでみてはいかがでしょうか。

 

年間トレーニング計画作成の手順

年間トレーニング計画は以下の手順で行います。

1.シーズンの目標を設定する
2.トレーニングの目標を設定する
3.年間トレーニング量を設定する
4.レースを優先付けする
5.シーズンを期分けする
6.週毎のトレーニング量を設定する

では、順を追ってやっていきましょう。
恥ずかしいですが私の例を載せています。

 

1.シーズンの目標を設定する

まずはシーズン目標を書き込みます。第5回を読んで目標を設定しましたでしょうか?まだならここでやりましょう。

シーズン目標は3つまで。
それは達成することで幸福感を感じられるものですか?あなたが次のステップに進むためのものになっていますか?計測可能で定義可能な明確な目標ですか?自分でコントロールできる目標ですか?

レース日、レース名、ゴールタイム、が最も明確な目標になるかと思います。

atp-2017ex01

 

 

2.トレーニングの目標を設定する

次に、あなたのトレーニングの目標を書きます。
その前に、第6回で解説したリミッターを書いておくといいでしょう(本のテンプレートにはありません。私の考えです)

atp-2017ex02

それを踏まえて、リミッターを修正した結果として、あなたがトレーニングの結果到達したい結果を書きます。それがトレーニングの目標です。

トレーニングの目標は、シーズン目標のサブゴールです。それを達成することがシーズンの達成に繋がると期待できるものです。
トレーニング目標は練習によって達成を目指すもの。しかしレースやシーズン目標では重要度が下がります。トレーニング目標の達成を優先してシーズン目標が見えなくなってはいけません。

トレーニングの目的は、レースに特化した弱点である「リミッター」を修正するものです。トレーニング目標は、単純にあなたのリミッターのどれか一つを修正するものとなります。

例)
リミッターがスイムのスピード技術
→25mの平均ペースを上げる
ex)基礎期2終了までに25m*10のアベレージを’20にする

リミッターがランの筋持久力
→LTペースのを向上させる
ex)強化期終了までに10㎞42分を切る

リミッターがバイクの筋持久力
→LTパワー(FTP)の向上
ex)強化期終了までにFTPを250Wに上げる

リミッターが無酸素持久力
→ゾーン5でのスピード・パワー向上/ゾーン5継続時間の延長
ex)強化期終了までにスイム100mを1分20秒以内
ex)強化期終了までにラン1200mを4分30秒
ex)強化期1終了までにバイクで〇〇坂を3分で上る、など

トレーニング目標を最大4つ記入しましょう。

atp-2017ex03

 

3.年間トレーニング量の設定

次に、このシーズンでトレーニングする総量を設定します。これには、3種目のトレーニングと、補強トレーニング(ウエイトトレーニング)、クロストレーニング時間を含みます。

時間、もしくはTSSで設定します。初めて作成するなら時間でいいでしょう。トライアスロンシーズンが4年目以上になってくれば、トレーニングで強度を重視すべきと第5回にありました。該当する方なら、時間と強度の結果であるTSSを使ってみてもいいかもしれません。(私は今年5年目。初めてTSSを使ってみます)

設定するために参考になる値にはいくつかあります。

・先シーズンの実績を基準にする
昨年実施した量を基準にしましょう。昨年、トレーニング量を上手く管理できて実施することができたのであれば、今シーズンはそこから10%増やしましょう。
始めて5年目までならボリュームを、それ以降なら強度を上げましょう。

・平均的な週のトレーニング時間に45をかける
1年間は52週ですが、トレーニングしていない時期やオフを除くと概ね45週になるという考えに基づいています。

・一般的な数値表から読み取る
本に参考値が掲載されています。第4版はP97、P190です。
メインレースがアイアンマンディスタンスであれば、「完走目標」なら年間500時間、より上を目指すなら800時間~です。

年間トレーニング量は、あなたが肉体的にできる量を決めるわけではなく、生活スタイルによって決定されるものです。仕事、家庭、その他の用事を鑑みて、あなたが管理できる時間でなければいけません。

これは、空き時間が集中しているアスリートにはあまり意味がありません。普段は週5時間しか取れないが、月末にまとまって30時間取れる、という月間45時間の生活スタイルでは設定することが困難です。そのような場合は強度を調整することでレースの準備をすることになります。

年間トレーニング量が決まったら、本から各週にどのようにあてはめていくのかを確認しておいてください。第4版ではP103、第3版ではP198-199にあります。

 

前半はここまでとします。
後半では、実際に表に書き入れて、レースの日から期分けを行っていきます。

画像を印刷したり、本をコピーしたり、Excelで表を作ってお待ちください(^^)

 

ここまでいかがでしたでしょうか?

実は、この期分けについてはここまで細かく書くつもりはなかったのです。

今回第1回から解説してきている内容の多くは、このTriathlete’s Trining Bibleでしか見たことがないもので、自分が勉強になっていると同時に、多くのトライアスリートとも概念を共有できればいいとおもって解説しているのですが、

今回のトレーニング計画の作成や期分けについてはそう目新しいものではなく、アドバンスドマラソントレーニングや他のトレーニング参考書でも広く扱われている内容であり、わざわざ解説せずとも多くの方が既知の内容であると認識していたためです。実際、自分の周りの多くのアスリート(ランナー含む)はピリオダイゼーションに従ってトレーニング計画を立てています。

しかし、Facebookでどうか聞いてみたところ、実際にピリオダイゼーションの概念を取り入れているアスリートはそう多くないとのことで、では改めて解説してみようと思ったのでした。

いろいろなパターンが存在するのですが、今回初めて年間トレーニング計画を作成するという方には、まずはこの古典的ピリオダイゼーションモデルを適用して頂き、翌年度からアレンジして頂ければと思います。

後半に続きます。

TTB解説(7))トライアスロンのシーズン計画を作成しよう(後編)

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