TTB解説(10):疲労回復の知識と実践(前編)

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トレーニングとは、ストレスとレストの組み合わせ。
練習によってストレスを受けた身体には休養やリカバリーが必要です。

この章では、回復の知識やテクニックについて解説がなされており、本の中で最も重要な章の一つであると思います。

ストレスとレストの関係

ハードなトレーニングが体力を増加させるわけではありません。トレーニングは体力のポテンシャルを引き上げるに過ぎず、そのトレーニングに適切な休養とリカバリーを伴ったときに、身体がストレスに適用して強く成長するのです。

何時間リカバリータイムを取るべきかは、練習のストレスレベルによります。強い練習の後には長い休養とリカバリータイムが必要です。

リカバリータイム=休養、とは限りません。休養は練習をしない完全休養時間、リカバリーは身体がストレスに適用するための時間で、ストレスをかけない軽くイージーな練習を含みます。

 

レストが苦手なアスリートは多く、私もその一人です。
しかしそれは、リカバリータイムの使い方を理解していない、理解しても活用できていないだけなのかもしれません。
回復を促すレベルの運動の気持ちよさが分かれば、決して拒否したくなるものではないと思っています。

 

疲労のモニタリング

故障や体調不良やオーバートレーニングを防ぐ最も良い方法は、日々疲労をモニタリングすることです。そして、疲労を把握したらそれが解消されるまで適切に休むことです。

モニタリングの方法のひとつとして、朝起きた時の体調チェックがあります。毎日決まった項目をモニタリングし続けることで基準ができ、平常時と違うときには気づけるようになるでしょう。

各項目で以下のような感じがあれば、ストレスが高くなりすぎ休養やリカバリーが必要かもしれません。

・睡眠時間が短い、睡眠の質が低い
・とても疲れている、強いストレスを感じる
・機嫌が悪い
・食欲が落ちている
・トレーニングへのモチベーションが低い
・筋肉や関節が硬くなっている
・起床時心拍数が高い
・仰向に横たわっている姿勢と立位の心拍数の差が大きくなっている
・心拍数の変動が小さい

 

私も毎日起床時心拍を計測しています。最近は手首で脈を測れる活動計があり、装着したまま寝ていれば動きの大きさなどで睡眠の質を計測してくれます。このようなものを活用してもいいでしょう。

 

素早い回復のために

非常にシリアスなアスリートにとって、練習をしていない生活時間全てがストレスからの回復時間です。練習時間以外の残りの時間を回復に充てれば、非常に高いレベルのアスリートになることも不可能ではありません。

トレーニングしていない時間、例えば仕事や家事や友人と過ごす時間中、「常に回復を心に留めている」ことです。自分自身を常に回復させるように働きかけることです。それにより回復のプロセスをスピードアップさせ、次のトレーニングをよりチャレンジングにできるのです。

「壁にもたれられるなら自立していないこと、座れるなら壁にもたれていないこと、横になれるなら座っていないこと」このようなルールに従って過ごし、常に回復に努めることで、より高いレベルのアスリートに近づけます。

 

あるプロのロードレーサーは、エスカレーターでさえ座っているという話を聞いたことがあります。「健康を維持するために階段を使いましょう」「一駅歩きましょう」このようなケースが当てはまる市民アスリートもたくさんいると思います。しかし、本当に強いトレーニングから素早く回復するためには、徹底的に身体を休めることも必要なのでしょう。
自分の疲労レベルを認識し、それに応じた行動がとれるようになれば、トレーニングも一歩高いレベルに上がれるのかもしれません。

 

回復のための最重要項目「睡眠」と「食事」

回復のために最も効果があるのは睡眠です。

ほとんどのアスリートが睡眠時間が短すぎます。遅くまでテレビを見て、アラームで起床し、仕事の前に練習をする。これでは十分な睡眠は取れず、十分に回復することもできません。もっと早く布団に入り、自然に目が覚めるまで寝ることです。それによってトレーニングとパフォーマンスが改善されるでしょう。

睡眠中に身体は同化します。筋肉のダメージを回復し、システムを再構築し、骨を再生させ、故障を癒し、エネルギーを再補充します。睡眠が短ければこの最も重要あ回復手法をとることができません。
また、これは週末まとめて睡眠時間を取るような休み方では機能しません。毎日十分に睡眠を取らないといけないのです。

寝る時間を最大化するためにできることがあります。
・午後の遅い時間にカフェインを摂取するのを止めましょう
・寝る時間間際まで仕事をするのを止めましょう
・静かな良い環境で寝ましょう
・いつも同じ就寝時間にしましょう
・寝室を暗くして部屋を涼しく保ちましょう

食べる時間や夕食の内容も影響があります。遅い時間の食事や寝る前のスナックは睡眠の質を下げます。高炭水化物の夕食は睡眠を妨げ、高蛋白質の食事がいいという研究結果があります。

 

この項目にドキッとした方は多いのではないでしょうか(笑)
私は22時に寝て5時に起き7時間の睡眠を取れますが、それでも目覚ましなしでは起きていません。直前まで考え事をし、考えなしにコーヒーや紅茶を飲んでいました。

ここを読んで午後に飲むコーヒーをカフェインレスに変えました。すると、びっくりするほど入眠が早くなったのです。なかなか寝付けないという方、一度コーヒーや紅茶、コーラなどのカフェイン量を記録してみてはいかがでしょうか?1日200㎎以上であれば摂りすぎです。

 

そして食事は睡眠の次に回復に影響を与えます。

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食事から摂った栄養によって身体は再構築されます。栄養価の低いジャンクフードでカロリーを摂っている限り、ダメージから回復することはできません。ビタミンのサプリメントでも補うことはできない。

食べ物にはタンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルが含まれ、栄養価の高い食事は身体を素早く、また十分回復させてくれます。しかし、口に入るまでに多くのプロセスを経た食べ物はその過程で本来の栄養素を破壊しています。自然に近く、プロセスが少ない物こそが健康と回復にいいものです。

スポーツ用に開発された食品であっても同じです。製造過程により栄養価は落ち、自然の食品には勝てない。パウダーやエナジーバーやエネルギージェルを食べる唯一の理由は利便性しかありません。それであってもフルーツなどの自然の食品に変更することができるはず。食事は食材をスーパーで買い自ら調理することが最もいいのです。

タイミングも重要です。練習後に素早く食べる食事は、通常の3食の食事と同様に回復に重要な意味を持っています。ここでも加工された食品を摂るのではなく、本物の食事を摂るべきです。

高強度の練習の後には高炭水化物の食事を速やかに摂りましょう。GI値の高い食品がよりグリコーゲンの再補充に役立ちます。適す食品は、果物(特にバナナとレーズン)、フルーツジュース、芋、穀物、パスタです。
ハードな練習後、体重1kgあたり1~1.85gの炭水化物を1時間毎に摂ります。55㎏の人なら55g~101g。バナナ中やオレンジジュース1杯で約28g摂れるので、その二つをシェイクしたもので適量の炭水化物を低コストに摂取することができるのです。
非常にハードな練習の後には、このようなものを練習後5時間まで飲み続けます。

正しい栄養バランスで食事をすることは難しく、ほとんどのトライアスリートは典型的な炭水化物過剰の食事をしています。特に砂糖が多い。ジェル、バー、ドリンク、、、スポーツ用の商品は砂糖まみれです。

多くのアスリートがタンパク質と脂肪を十分に摂れていません。脂肪は健康に必須のもので、避けるべきものではない。実際、多くの超持久系レースに参戦するアスリートが高脂質食によってレースパフォーマンスを改善しています。
インターバルやウエイトトレーニングのようなストレスの大きい練習後にたんぱく質を摂るのは筋肉の再構築に必要なことです。10-30gのタンパク質を練習後3-4時間毎に摂取します。これも食事が望ましいです。ゆで卵で7g、大さじ1杯のピーナッツバターで14g、85gのチェダーチーズで21g。調べて準備しておくといいでしょう。

寝る前にタンパク質を摂取すると回復力が改善し、筋肉修復に役立ちます。睡眠にもメリットがあるので、ホットミルクなどでタンパク質の摂取をするといいでしょう。

水分摂取も回復に重要な要素です。十分に回復できない傾向があるとしたら練習でかいた体液量を補えていない可能性があります。
渇きに対して定期的に水分を取るだけで十分です。練習前よりも体重を増やす必要はありません。

 

これを書いている私は主婦なので、食事は自分で作れます。だからそう栄養面に苦労することはありません。多くの野菜、タンパク質メインのおかずをいくつも作りおきし冷蔵・冷凍しておけば、練習後速やかに摂取することができます。コンビニで補給に何かを買うこともほとんどありません。

しかし読んでくださっているほとんどの方はそうではないでしょう。奥様が作られた食事を特に意識せず食べていらっしゃるのではないでしょうか。

いくつか提案があります。
奥様に、高タンパク食のレシピを渡して調理を依頼し、通常の食事に足させてもらう。また、そこだけは休日に台所に立ってみてもいいのではないでしょうか。
仕事終わりのジム後のロビーで食べるために、朝おにぎりとゆで卵を作って持って行きましょう(夏は止めてください笑)。バナナケースでバナナを持って行くのもいいです。

たんぱく質多めのレシピをいくつかまとめています。ご参考下さい。

食事にちょい足し!サラダチキンなど簡単に作れる高タンパク質おかず
小腹が空いたときにすぐできる!タンパク質たっぷりの簡単おやつレシピ!
不足しがちなタンパク質を補給できる簡単おやつレシピ!その2

 

長くなりましたので一度切ります。
後半では、睡眠・食事以外の回復策と、トレーニング計画への回復の組み込み方についての部分を解説します。

TTB解説(10):疲労回復の知識と実践(後編)

トライアスリートトレーニングバイブル解説 トレーニングピークス解説 トレーニング研究 続きです。 前回、回復に重要なのは なにより睡眠と食事 とありました。そこにプラスできる回復策について書いていきます。 積極的休養、回復走、などと言われます。軽いエクササイズをすることで血流を促し、疲労回復を早めるというものです。 しかし、これが効果的となるのには条件があります。 …

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