TTB解説(4)成果を出すためのトレーニング強度(ゾーン設定編)

トライアスリートトレーニングバイブル解説 トレーニング研究

「トレーニング強度」について、続きです。
前回(トレーニング強度の用語解説)はこちら。

前回は、トレーニング強度を測りトレーニングに活用するためには、まず基準となる値の計測が必要、ということを説明しました。その値にはAnT、LT、FTがありそれぞれ近似で、「1時間継続できる最大の強度」をFT(機能性閾値)でとらえればそれを利用できます。

では、今回はその続き。計測方法と、そこからのゾーン設定について解説されている部分をまとめました。

FT(AnT/LT)の計測とゾーン設定

FT値の計測には「1時間のタイムトライアル」を行えばいいのですが、実際にはそれはハードすぎて1人で実施することは困難です。実施した場合であっても、1時間継続できるか不安になりスローダウンしてしまうため、結果的にこのテストは実際の値よりも低くなってしまうのです。

なので、20分間のテストを実施してその値の95%を取ることでFTとします。

テストは3種目それぞれで行います。3種続けてトライアスロンのタイムを取っても意味はありません。

スイムのタイムトライアルテストとゾーン設定

1000mのタイムトライアルを行います。1000mのレースとして、1000m泳ぎ切れる最大強度で泳ぎます。回数を間違えないように誰かにカウントしてもらうといいでしょう。

結果のタイムをペースゾーン表に当てはめて、ゾーン設定を行います。

ペースゾーン表は第3版と全く同じ。なお、このゾーン表はネットでは公開されていませんでしたので掲載はしません。
第4版ではP46、第3版ではP94に記載があります。

バイクとランの心拍ゾーン設定

バイクとランのゾーン設定には、20分間の最大努力テストを行います。
ランはトラックが最適です。
バイクは交通量が少なく信号ストップがなく勾配が3%未満場所を探さなければいけません。
最大努力のタイムトライアルなので、最後はオールアウトします。タイムよりも安全にテストを終えることを最優先にしなければいけません。

ローラーでもいいという記述はありませんでした。(パワーゾーンの方にあるのでいいのかな?)安全面や20分間走り続けられる環境の有無を考えれば、ローラーでもいいと思います。しかし実走と固定ローラーのパワー差は大きいので、パワーについては基準値は別になるんじゃないかと思います。

テストを行う前にはできれば3日間トレーニングを休み完全にフレッシュな状態にします。テストの前に最低20分間のウォーミングアップをします。主観的強度1から7まで徐々に上げていきます。その後、低い主観的強度に下げて2分間のリカバリーを行います。

テストの最初は速く走らず、抑えてスタートします。数分間は楽に感じてしまうからです。後半に向けてペースを上げていきましょう。最初の5分間は比較的イージーに、その後5分ごとに少し速くするか遅くするかを決めましょう。しかし5分毎に変化させるのはほんの少しです。

20分間のテストが終わったら、クールダウンを行って、データを確認します。20分間の平均心拍数を取り、5%を引いたものがFT心拍数です。バイクとランそれぞれで行います。

テストの値を表に当てはめて、各ゾーンの心拍域を確認しましょう。

第4版ではP47~P48に、それぞれのゾーンの割合が書いてあります。
第3版ではPに100~P101、すでに割り当てられた数値が一覧になっているので、そこから読み取ります。

※ここの割合の数値がすでに公開されている情報であれば書こうと思ってフリールの過去のブログなどをチェックしたら、2009年の記事にありました。コピーすると問題ありそうなので、リンクだけ貼っておきます。

A Quick Guide to Setting Zones
http://www.trainingbible.com/joesblog/2009/11/quick-guide-to-setting-zones.html

バイクのパワーゾーンの設定

バイクの心拍テストの際にパワーメーターを使用していれば、同時にパワーゾーンの設定も行えます。平均パワー(NP)から5%を引いてFTPとします。

パワーゾーンの設定は、第4版ではP48に、第3版では対応するものはありません。(第3版ではCP60を使ってました)
しかし前述のリンクに割合が書いてありますのでそれで確認できます。

ランのスピードゾーンの設定

ランの心拍テストの速度をそのままスピードゾーンに利用できます。20分間で走った平均ペース(/km)を表に当てはめます。

第4版ではP49に、第3版ではP95にあるのですが、誤植(誤訳かな~?)で㎞ペースと言いながらマイルペースになってますので計算しなおさないといけません。
前述のリンクにも割合が書あるのでそちらを使った方が早いかも。

ゾーンの一致について

バイクのパワーメーターと心拍ゾーン、ランのスピードゾーンと心拍ゾーンは必ずしも一致はしません。優秀なアスリートは、シーズン中の心拍ゾーンの変化は非常に小さいですが、パワーゾーンやスピードゾーンは明確に変化するのです。FTパワーとFTペースは向上し、もっと強くもっと速くなるということです。体力が落ちる場合であっても同様で、パワーとスピードが落ちても心拍ゾーンは維持されています。
シーズンを通じて心拍ゾーンとパワー/スピードゾーンが一致し続けることはありません。

与えられた心拍ゾーン(または主観的強度)の中で、よりハイパワーで、より速く走ることが体力向上のカギなのです。

トレーニング強度の配分はどうすべきか?

シーズン中、トレーニング強度をどのように分配すればいいのでしょうか。様々な説があります。ある科学者は「トレーニングはAeT以下の低負荷とAnT以上の高負荷だけで構成され中負荷は少しでいい」と言います(両極のトレーニング)。別の科学者はレース強度(AeTとAnTの間)こそが重要と言います。

どの説であっても、シーズン中のほとんどの時間はAeT以下に費やすべきです。おおよそ70%~80%を、非常にイージーなトレーニングにすべきです。AeT以下の低負荷を70-80%、AeTからAnTの中負荷を15-25%、AnT以上の高負荷を5-15%の構成になります。その幅の中でどういった構成にすべきかは、個人により、またレースのタイプによります。

なぜそのようにイージーな時間を多く取らないといけないのでしょうか。ここがキーポイントです。イージーな時間をよりイージーにすることで、ハードな時間をよりハードにできるのです。イージーな時間が次のハードトレーニングを本当にハードなものにしてくれるのです。もしそこでAeTからAnTの中負荷トレーニングをしてしまえば、疲労を積んでしまい最も重要な練習の妨げになってしまうでしょう。多くのアスリートがこの失敗をしています。
高いレベルのアスリートになりたければ、イージーな練習をたくさんすべきなのです。

これら全ては「シーズン全体で」考えるべきです。毎週同じ方法で練習することは好ましくありません。同じトレーニングを続けていても体力は慣れて向上しなくなってしまいます。変化をさせることが有効なのです。

ここ、めっちゃ重要なこと書いてますね。

以上、2回に渡ってトレーニング強度に関する部分の解説をまとめました。

このようなトレーニング本を読み取る上で、基本的な言葉が理解できているかできていないかで全体的な理解度も変わってくると思うのです。私は運動生理学を学んだことがない30代後半からのトライアスリートですので、このあたりを理解するのにとても時間がかかりました。しかし、その分一般の方に分かりやすい言葉で書けるかなと思いますので、この回のように捕捉をしながら書き進めていきたいと思います。

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