TTB解説(5)トレーニングシーズンのはじめにやるべきこと

トライアスリートトレーニングバイブル解説 トレーニング研究

トライアスリートトレーニングバイブル第4版解説、第5回です。

ここまで心構えや前提知識の習得が多くを占めていましたが、いよいよトレーニングシーズンの準備にとりかかります!

と言ってもまだ心構えを今シーズンに落とし込むに過ぎません。なかなかトレーニングさせてくれませんよ、フリール先生(笑)

今回は、シーズン(レースシーズンという意味ではなく、そこに向けてのトレーニングシーズンを指します)の頭にやるべきことについて解説されています。
ttb

英語版の発送がボチボチ始まっているようです。なお、これから期分けや週のスケジュールの立て方、強度の配分などの解説部分に入ってくるのですが、表やグラフを転載する気は一切ありません。来期のトレーニング計画を立てるのにこの本を参考にしようと思っている方は、購入しないと無理です(^^ゞ
どうぞこちらから。

 

「毎」シーズンのはじめに

これまでトライアスリートとして何シーズン重ねてきたかに関わらず、シーズンの最初には毎年同じ準備をします。肉体は決して同じ状態ではなく、それに応じて毎年再構築が必要なのです。また、シーズンの頭にマーカーの意味で現時点の体力や精神力の評価をしておくことが、アスリートとしての進歩を確実に記録することにもなります。

これを見ているのがシーズンのいつであろうと、このガイドラインに沿って正しくスタートすることを勧めます。それがレースに向けての正しいトレーニングの土台となり、結果的に最も効果的な方法となるのです。

 

目標を立てましょう

いい目標というのは、挑戦的なものではあるけれども達成の可能性がないものではいけません。それはただの「星への願い」でしかありません。夢を持つことはいいことですが、それは今シーズンの目標にはなりえません。

シーズンの目標

新しいシーズンのはじめには、新しいゴールを設定しましょう。コナに出たいとか、レースで表彰台に立ちたいとか、今までの夢は一旦クリアにして、今シーズンの目標を正しく設定します。目標は3つ以内、明確に定めましょう。

目標は測定可能なこと。「早くゴールする」では目標になりません。「7月10日の○○トライアスロンで2時間20分を切る」と目標ゴールタイムを含みましょう
エイジで何位、エイジで入賞、という順位の目標よりも時間目標が望ましいです。順位はそのレースにどんな選手がエントリーするかに依存しており、コントロールできるものではないからです。目標は、「今の自分の能力と比較してどれだけできるようになるか」というもの。ゴールタイムの目標を設定していれば、誰が出場し順位がどうであれ達成の判断ができます。

立てた目標は達成できるものでしょうか?少なくとも、達成できるか疑わしいもののはずです。そうでなければ、簡単すぎて挑戦的でなく、今シーズンの時間と労力を消費する価値がありません。
一方で、目標があまりにも大きく、達成することをイメージできない場合もトレーニングがただの時間の浪費になってしまいます。成功したいのであれば、目標を達成することが想像の範囲内にあり、達成できると信じる強い理由がなくてはいけません。

トレーニングの目的

達成したい目標と、今のあなたの間にあるもの、それがリミッター(=制限するもの)です。レースに向けたトレーニングの目的とは、このリミッターを修正することです。
リミッターを修正するためには何が必要なのか、を定義するサブゴールがトレーニングの目的なのです。

設定したゴールタイムを達成する上で、それを阻むリミッターは何なのか。それを修正するサブゴールを定義し、それに向かうことがトレーニングの目的です。例えば、登りが弱く登りのタイムが足を引っ張っているなら、パワーを上げる必要があります。いつも後半疲労してペースダウンしてしまうならば持久力を伸ばす必要があります。

それらの目的に対し、いかに進歩しているかで、目標への進捗を知る事が出来るのです。

日々の目的

すべてのトレーニングには目的があります。少なくとも何かを改善するためのものでなくてはいけません。ある日においては、バイクのパワーやスイムの技術を改善する挑戦的なものでしょうし、またある日にはハードなトレーニングから回復するためのイージーなものかもしれません。それが何であれ、日々の行動やトレーニングは、全て目的があるのです。

毎朝、今日何をすることで目的や目標に近づくのかを知ることから始めます。高いパフォーマンスのためには毎日の行動が重要なのです。

優秀なアスリートは、シーズン目標の達成のために、小さな努力を重ねています。食事、睡眠、パートナーとのかかわり、、、今あなたが些細だと感じているようなことも。夢を掴むのはそう簡単なことではないのです。

 

現時点の評価をしましょう

目標が高いほど課題が多くなります。そこには計画が必要です。目的やそこへのルートを考えずに走り出すほど愚かなことはありません。ルートの選択において最も基本的な要素は、「私が今どこにいて」、「どこにいきたいか」です。どこにいきたいか、は目標の設定、そして、今どこにいるか、は「肉体的な評価」「精神的な評価」「体力レベルの評価」の3つのポイントから知ることができます。

肉体的な評価

シーズンのはじめには、健康診断や身体検査をすることを勧めます。
持久系アスリートに特化した理学療法士がいれば、頭から指先までテストして、姿勢や強さや可動域、筋肉バランスなどの構造を確認してもらえるでしょう。
この目的は「故障リスクを測る」ことです。故障を避けることが最も重要なのです。

精神的な評価

メンタルスキルのチェックを行い、自分の精神面の強み弱みを知りましょう。
※本にはメンタルチェックのテストがありますが、ここでは割愛します。30問の質問に解答すると、「モチベーション、自信、イメージ力、集中力、意識習慣」の5項目の自己評価をすることができます。(第3版、第4版とも同じ内容です)

この本を読んでいるということは、おそらくモチベーションは高いのでしょう。一般的にトライアスリートはみなモチベーションは高いのです。しかし、モチベーションの高さは逆に問題もあります。休養を取ったりトレーニングを減らすことが下手なため疲労を溜めがちで、オーバートレーニングに陥りやすい傾向にあります。

自信やイメージ力はパフォーマンスを発揮するために重要な役割を担っています。この点数が低いのであれば改善方法を発見する必要があります。高額ですがスポーツ心理士に相談するか、スポーツ心理に関する本を読むことをお勧めします。

体力の評価

トレーニングをするのは何かを改善するためです。トレーニングによって改善ができているかを測るには、定期的にテストを行い改善の進捗を確認すべきです。

貯金をしたければ貯蓄額の確認を、読書量を増やしたいなら何冊読んだかを記録するように、トライアスロンの目標や目的についても同じことが言えます。立てた目標への進捗について定期的に頻繁に計測すれば、素早く問題を見つけ改善方法を検討することができます。定期的にテストをしなければ、トレーニングの進捗はレース当日まで分からないということになってしまいます。

クリニックやラボなどでVO2MaxやLT、エコノミーを計測することで、明確に自分の能力を知ることができますが、かなり高額です。(日本でもアシックスラボなどこのようなデータ測定を行える施設がありますが、高額であることに加え、なかなか予約が取れません)

その代りに、ゾーン設定のためにFT(FT心拍・FTパワー・FTペース)を計測した方法で、定期的にフィールドテストを行い、進捗の評価をするといいでしょう。

今後、トレーニングスケジュールを立て、期分けを行います。各期(基礎期1、基礎期2、強化期1など)の最終週でこれらのテストを行うことを推奨しています。

 

トレーニングの準備

シーズン目標達成の可能性を最大化するために、最も効果的な方法でスタートすることを提案します。各種目で必要な準備について解説します。

スイム

スイムは、3種目の中で最も技術に依るところが大きいスポーツです。技術改善のために最も重要なことは、インストラクターについて頻繁に技術改善のフィードバックをもらうことです。スイムが得意で信頼できるトレーニング仲間、プールのインストラクター、トライアスロンのコーチ、スイミングスクールのマスターズクラスのコーチなどです。そのようなセッションに週に2-3回参加しましょう。

それが困難なのであれば、まず家か職場の近くにアクセスのいいプールを見つけることです。毎日使えて、人数が少なく、能力に応じてコース分けがされているプールが望ましいです。

オープンウォーターについては、湖や海のアクセスがよければレースに特化したスキルを改善するのに役立ちますが、決して一人で泳いではいけません。少なくとも2人以上、できればスクールなどのオープンウォーターセッションなどに参加しましょう。

用具については大した問題ではありませんが、自分用のプルブイがあるといいでしょう。

バイク

毎年たくさんのレースを見ていますが、残念なことに多くのアスリートが大金を費やしてエントリーし遠征し高額なパーツを購入していながらバイクフィッティングが正しくなされていません。なんと浪費していることでしょうか。
バイクパートはトライアスロンレースの鍵です。レースタイムの半分を費やします。バイクのセッティングが悪く、サドルの高低・前後、ハンドルの長短・高低が合っていなければ、ライダーに負担をかけ、適切にパワーをかけることができず、エアロダイナミクスに劣り、エネルギーを浪費する残念な結果を生んでしまいます。

前のシーズンと同じバイクを使っていても、毎年フィッティングを受けるべきです。決して自分でやってはいけません。そこはトレーニング仲間や友人でもダメです。フィッティングを仕事にしているプロに、しかもトライアスリートへのフィッティング経験豊かなフィッターを訪ねるべきです。

ギアについて言えば、トライアスロンバイクは非常に高価で購入を躊躇するでしょう。予算がなければ中古を探すのもいいでしょう。しかし、いかに高価なバイクであってもサイズが合っていなければ意味がありません。

良いバイクに加え、心拍計が必要です。そしてパワーメーターの購入を強く強く勧めます。確かに高価な装置ではありますが、値段は落ちてきています。パワーメーターはレースに向けたあなたのパフォーマンスを大幅に改善すると信じています。それはエアロダイナミクスに優れたホイールを買うよりももっと効果があります。ホイールではなく、レースに勝つためのエンジンを育てることにお金を使いましょう。ローラー台も欲しいところです。

最後に必要なものは適切な練習場所です。平坦な周回コースと、適度な坂のコースがあればベスト。7%前後と3%前後の坂があればパワーを成長させるのに役立つでしょう。しかしそれは平坦な周回コースでも構いません。そのような場所には通常強い風が吹いており、坂を上っているようにライダーを強くしてくれるからです。

ラン

ランニングは単純です。最も重要なギア、ランニングシューズに最大の気を遣いましょう。確実にフィットしたランニングシューズ、それにはシューズフィッターにシューズを選んでもらうことをお勧めします。
舗装路用、トラック用、トレイル用などと路面に応じて数種類持てれば、よりいいです。

シューズが傷んだ時には必ず買い替えます。ソールと踵の端をチェックし、傷みに気付いたら故障を防ぐために買い替えるべきです。

さらに、スピード練習用と距離練習用で2種類のシューズを持つことを強くお勧めします。心拍計とGPSウォッチもです。

自転車同様、適切な練習場所も重要です。平坦な周回コースの他、徐々に上がって行くトレイルコースがあるといいでしょう。ランニングパワーの改善に役立ちます。
また、トレッドミル、室内トラックなど室内でトレーニングできる環境があれば天候に関わらず走ることができます。

ウエイトトレーニング

ウエイトトレーニングは、トライアスロンのパフォーマンスを改善するのに役立ちます。バーベルやダンベルなどのフリーウェイトが利用できればいいですが、最も価値があるのはトレーニング用のマシンです。そう高いものではありませんが、家の中に置くのは難しいかもしれません。

 

以上、トレーニングシーズンの頭に準備することについての部分からピックアップしました。まとめますと、

・今シーズンで達成したい目標はなんですか?
・現時点の身体と精神を評価し、体力レベルのチェックをしましょう。
・バイクはポジションが重要。適切なフィッティングを受けましょう。
・パワーメータを導入することを強く勧めます。

ですね。シーズン目標としてのレースのタイム目標設定、まさかこの時期にやるの?って思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし最初に設定して、そこに至るまでに今の自分から何を上げないといけないのかを見定めることから、このシーズンのトレーニングがレースに向かって進められるということですね。無計画にただ日々のトレーニングを積み、レース1か月前くらいに体力を判断してレース目標を定めるというやり方では、真に価値のあるシーズンを過ごせないということだと思います。

私はこの本(第3版)を購入して以来、シーズン頭に目標を設定しています(ブログには書いていなかったと思いますが)。しかしそれが現実的なものなのか、そこに至るまでに自分の足りないものがなんなのかがなんとなく分かるようになってきたのは、ずいぶん後になってからです。結局は数年経験しなければ自分では見いだせないのかもしれません。

しかし、それを短縮することができるのが、この本のやり方や推奨している方法に沿ってみることなのかなと思っています。目標を定め、現時点での自分を数字で評価し、数値目標を設定し、それに向かって目的のあるトレーニングを日々行う。定期的にその進歩をテストして数値で確認し、目標への道が正しいかを判断する。毎月のそのサイクルが、数年の経験にも勝る自己評価スキルアップにつながるのかと思っています。

次回は、体力を構築していくことについて、パフォーマンスを決める構成要素を理解し、そのためのトレーニングについて確認していきます。

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