TrainingPeaks(トレーニングピークス)を活用したパフォーマンス&疲労管理

トライアスリートトレーニングバイブル解説 トレーニングピークス解説 トレーニング研究

トライアスリート・トレーニング・バイブル第4版を読解するにあたり、推奨されているTrainingPeaksを使い始めました。
自分用の勉強も兼ねて使用方法や見方をまとめていきます。

設定が適切にできていれば、トレーニングの度にデータは自動的にアップロードされ、設定値に従ってTSS、CTLなどの各値が自動更新されていきます。

しかし、最低6週間のデータがなければ今日現在の値が正しく出ないので、6週間分のデータを取り込んでおきましょう。取り込めるデータはガーミンのFITファイルやTCXファイルなど。ガーミンコネクトからダウンロードして、カレンダー画面に一気にファイルをドラッグすればそう面倒な作業ではありません。

PMC(PerformanceManagementChart)を見てみましょう。ダッシュボード画面には、取り込んだデータをもとにグラフが表示されています。

tp01

各項目の意味は以下の通りです。

青い点:IF(Intensity Factor/運動強度係数)

その日のトレーニング強度を表します。1時間継続できる最大強度に対する割合で、バイクならFTPで1時間運動すれば1.0、ランはLTで1時間運動すれば1.0となります。
複数トレーニングした場合はその複合で算出されています。

0.75以下  リカバリー
0.75~0.85 エンデュランス(持久ペース)
0.85~0.95 テンポ
0.95~1.05 LT
1.05~1.15 短いタイムトライアル
1.15以上  トラックレース強度

赤い点:TSS(Training Stress Score/練習ストレス度)

練習強度と継続時間を点数化したものです。FTP/LT強度で1時間運動したときのTSSが100となります。

TSSと疲労度・回復目安が以下のように示されていますが、実際には個人差が大きく適用は難しいかもしれません。私はTSS100を超えていれば翌日にも疲労が残っています。

TSS 150以下 翌日にはリカバリーが完了
TSS 150~300 疲労が翌日に残る。翌々日にはリカバリーが完了
TSS 300~450 2日後にも疲労が残る
TSS 450以上 数日間は疲労が残る

ピンクの線:ATL(Acute Training Load/直近(7日間)のトレーニングの影響)

過去7日間のトレーニングの加重平均で、疲労状態を示します。高いほど疲労状態、低いほど疲労が抜けたフレッシュな状態であると言えます。

青い線:CTL(Chronic Training Load/長期(42日間)のトレーニングの影響)

過去42日間のトレーニングの加重平均で、体力の状態を示します。高いほど体力や運動能力が高いと言えます。

黄色い線:TSB(Training Stress Balance/ストレスバランス)

CTL(体力)からATL(疲労)を引いたもので、調子やパフォーマンスを示しています。

これらの値から、様々な管理を行うことができます。

 

ターゲットレースに向けての体力(練習効果)向上管理

レースが決まっているアスリートであれば、目標とするレースに向け、CTL(体力、練習効果とも言える)を向上させていく、というのが一番の目的となるかと思います。

目標とするCTLの値はそれぞれのレベルによって異なりますが、メインレース時に70-100までは積み上がっていたいところ。しかしCTLを急激に上げることはオーバートレーニングのリスクが高まるため、徐々に上げていくように練習計画や練習期間を設定する必要があります。

具体的には、1週間でCTLを3~7程度ずつ上げていく計画が無難。レスト週は維持か1~2の低下として、現状CTL50の人がターゲットレースまでに100まで上げようと思うと最低4か月必要ということになります。トライアスリートは単種目の選手よりはそれぞれの種目でのCTLの上昇は低めに抑え、負荷を分散させた方がいいようです、
レース前に2週間のテーパリングを行うとすると、2週間前にCTLが最大化するように計画するといいでしょう。

この目的でTraining Peaksを使うのであれば、有料版でなければ役に立ちません。日々のデータをアップロードすることでTSS、CTL、ATLは自動計算されますが、どのようにCTLを上げていくかの計画やトレーニング予定の入力は無料版ではできません。
(計画作成とその管理方法については別途まとめます。)

 

日々の体力と体調の管理

特にレースが決まっておらず、日常のトレーニングによって体力を向上させることが目的でありつつも、トレーニングのし過ぎで体調を崩したり、トレーニングを休み過ぎて能力が低下したりといったことを避けるための管理に活用することができます。

特にTSB(ストレスバランス)の値(黄色い線)に着目します。(以下はJoeFrielの見解を引用)
tsb

-30 High Risk Zone
このゾーンを長期間続けるとオーバートレーニングのリスクが高まります。2-3日に留めるべきです。

-10~-30 Optimal Training Zone
このゾーンにある時が最も効果的なトレーニングが行われているとされています。体力の向上を目的としているのであれば、シーズンの多くの期間でここを維持するといいようです。

-10~+5 Grey Zone
あまりトレーニングを積めておらず、体力の向上や改善が見られないゾーンです。レスト週、テーパリング期間、オフシーズンからの回復期などはここに当たります。

+5~+25 Fressness Zone
レース直前、レース当日、もしくはシーズンの終わりなどで、完全に疲労が取れてフレッシュである状態です。傾向として、高強度の短時間レースの場合は当日のTSBの値は高い方がよく、長時間のエンデュランスレースの場合はTSBは低目が望ましいようです。(おそらく高すぎると最初抑えられないからではないかと思われます)

+20~ Transitional Zone
オフシーズンの終わり、もしくは怪我などで長期に休んでいる時のゾーン。ここにあるときは、「疲れていないが体力も高くはない」時であり、シーズン中にここにあるべきではありません。

この目的であれば、日々のデータのアップロードから自動計算されるCTL、ATL、TSBの値をチェックしながら次のトレーニングを決めればいいので、無料版でも問題ないかと思います。(グラフは表示されません)

 

TSSを目安にトレーニング内容や強度を決める

ターゲットレースのあるなしに関わらず恒常的に体力の上昇を目指し、週や月のTSS目標を立ててトレーニングスケジュールを計画することができます。高いレベルの選手であれば700TSSや月間3000TSSといった目標となるでしょう。
また、それを達成するための各トレーニングの目標TSSを設定して、強度や運動時間の目安とすることもできます。

JoeFrielのブログにあった目標設定の例を引用します。現在のCTLをベースにして、高強度・中強度・低強度のトレーニングのTSS目標を設定しています。高強度はCTLの1.5~2倍、中強度はCTLの1.1~1.3倍、低強度はCTLの0.7~0.8倍で見積もります。

例1:CTL100の高いレベルの選手
高強度トレーニング:150-200TSS
中強度トレーニング:110-130TSS
低強度トレーニング:70-80TSS

例2:CTL50の一般的レベルの選手
高強度トレーニング:75-100TSS
中強度トレーニング:55-65TSS
低強度トレーニング:35-40TSS

ただし、トレーニング予定の登録機能は有料版のみです。

 

TrainingPeaksを活用するための条件

TrainingPeaksは非常に有用なツールであると思いますが、正しいデータを出すためにはいくつか条件があります。

・値はトレーニング毎のTSSから算出されるので、その基準となるFTPやLT心拍の設定が正確であること。パワーベースであれば定期的にFTP計測を行うことや、心拍ベースであればトレーニングによりLT心拍数が上昇したと思われる場合は再設定の必要があります。

・TSB(ストレスバランス)を体調管理に使用するには、全てのトレーニングデータでTSSが算出されていないといけない。アップロードされていないデータがあったり、心拍計測していないデータがあると信頼性に乏しくなってしまいます。

・あくまでもトレーニングが与えた影響を数値化するツールであるため、トレーニング以外のストレスは考慮されていません。栄養不足、睡眠不足、日常生活のストレスなどが高い場合には、数値を無視してでもトレーニングを調整すべきでしょう。

ここに紹介しているのはTrainingPeaksのごく一部の機能ですが、PMCだけでも非常に有益なツールであると感じました。これが月20ドルなら安いと思いますが、日本語化されていないことと、時間や距離以外でトレーニング管理をしたことがない場合には敷居が高いと感じるかもしれません。

登録と一部機能の利用は無料ですし、登録から7日間は有料版の全機能を利用できます。競技能力の向上や疲労管理のやり方に迷っているのであれば、まず試してみてはいかがでしょうか。

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