TTB解説(9):強くなるためのストレスとは

トライアスリートトレーニングバイブル解説 トレーニング研究

1か月ぶりのTTB解説記事更新です。

前回、トレーニング計画を作るまでで一旦締めていましたが、まだまだこの後も参考になる情報が山盛り。少しずつ更新していきます。

2回に分けて、ストレスとレストについての部分を解説します。

 

強くなるためのストレスマネジメント

身体はストレスをかけ、それとバランスの取れたレストを取ることによって強くなります。トライアスロンにおいては練習こそがストレス要因(ストレッサー)となり、練習は体力と疲労を積み上げます。

最初はいいストレスとして働く練習も、高いストレスのかけ過ぎやレスト不足により悪いストレス(Distress:苦悩・苦痛)となり、体力の減少と疲労の増加を生むパラドックスにはまっていきます。強くなるための練習を重ねていたはずが、故障や病気を生み、目標に到達できないどころか、健康被害に至ってしまうこともあるのです。

そうならないためのストレスマネジメントはトライアスリートにとって大変重要な課題です。

 

トレーニングのリスクマネジメント

ストレスの高い練習とは、長時間、高強度、高密度。その3つの組み合わせです。高密度とは、ハードな練習同士が近い状態を言います。

ストレスの高い練習は、リスクが高く、効果も高い。投資と同じです。リスクの低い練習は効果も低い。そのバランスが鍵です。

頻繁に故障や体調不良に陥っている人は、高いリスクの練習に投資しすぎです。一方で、低いリスクの練習ばかりをする人は、効果を上げられず自分の可能性に到達することができません。成功のためにはリスクを取らないといけない。しかし、リスクはコントロールしなければなりません。

 

週のどの練習でリスクを取るのか。リスクの高さや量は自分の今の能力(体力、筋力、回復力など)にとって適切であるのか。そしてそのためのリカバリー策が講じられているか。ダウンタイムを避け体力を構築していくためには、常にそういったリスクマネジメントをしながら進めていかないといけないのです。

 

リスクの高い・低い練習とは

時間・強度・密度以外にもリスク要素があります。

まず、3種目の中で最もリスクの高い練習はランニングです。跳ねるという動作と、筋肉のエキセントリック運動であることがリスクが高い理由です。柔らかい路面であればリスクを減らすことができるでしょう。ランの練習には最も量や密度に注意を払わなくてはいけません。

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最もリスクの低い種目はスイムです。スイムはランに比べると故障率が低い。しかし、技術が稚拙であったり、パドルや抵抗用具を使った負荷練習でリスクが高まるため注意が必要です。

バイクの故障は膝に集中していますが、その原因のほとんどはセッティングの悪さです。サドルが低すぎる、遠すぎる場合に発症しがちです。または稚拙なペダリングが原因にもなります。登りを重すぎるギアでシッティングで登ることも膝を痛める大きな原因です。

プライオメトリックトレーニング(※バネを鍛える系のトレーニング。ジャンピング、ホッピング、バウンディング、縄跳びなど)はリスクが高いですが効果も高いトレーニングです。高い場所からのジャンプが最も高リスクです。

ウエイトトレーニングは、高負荷低回数になるほどリスクは高まります。しかし正しく行えば非常に効果が高い。

高いリスクのトレーニングを成功させるカギは、低いリスクの運動から始めて徐々に増やしていくことです。身体を適用させていくには、ゆっくりと徐々に高めていくべきなのです。

ロング志向のトライアスリートがやりがちな、ロングブリック練習は最もリスクの高い練習であることを知っておいてください。疲労した身体や脚で長くランニングをすることは故障の可能性を高めます。

 

オーバートレーニングを避ける

トレーニングによるストレスが過剰となっているかどうかを知るために、常に心身の状態をモニタリングしているべきです。

身体の状態では、安静時心拍の計測、体重の増減、食欲の減退、睡眠状態など。
トレーニング時にはパフォーマンスが著しく落ちていないか。バイクのパワーやスイム・ランのスピードなど。
精神状態では、練習へのモチベーション、集中力の欠如、自信喪失など。

科学も状態を知る指標となります。高いパワーやスピードを出している時の心拍の低さ、低強度のトレーニング時の心拍数の高さなどはサインの一つです。

他にも、風邪をひく頻度が高くなっていたり、リンパ腺が頻繁に腫れる場合も要注意。

 

深刻な状態に陥る前に、必ず「なんだか調子が悪い」状態を通過しているはずなのです。そこで気付けて対処できるか、強くなりたいからと見過ごして続けるか。それもアスリートの重要なスキルだと思います。

 

故障と病気

故障や病気になったらトレーニングは休止するのがベストです。
故障の場合は他の2種目であれば継続することが可能な場合もあるでしょう。

何よりも故障は避けなければなりません。故障を避けるためには、ハードな練習を取りやめるタイミングやポイントについて感知することが非常に重要です。インターバルは、もう一本いけると思っても止めてクールダウンに入りましょう。長い時間の練習の最後数分、練習を止めようかと思うタイミングが危険な瞬間です。そこでの無理や追加が故障や病気に繋がります。

練習をストップするという我慢ができないアスリートは故障や病気を繰り返し、度々練習を休んで体力を失っていくのです。

忍耐強く、節度をもったトレーニングこそが、レースに向けて体力を構築していく一番の近道なのです。

正しい量のストレスは、体力も経験も高めます。
自分にとって正しいストレス量を知るには、低いストレスから試して増やしていくこと。そして常にストレスへの心身の反応に敏感であることです。

 

トライアスロンを始めたばかりの方は、練習の度にパフォーマンスが上がるのが楽しくて、ついつい練習を重ねてしまいがちです。私もロング1年目は毎週末5時間6時間とロング練習を重ねました。

結果、待っていたのは辛いだけの平日。毎週のように風邪をひいて、それでも練習を休まなかった。そんな先に成功がある訳はないのです。それに気づけたのは、呼吸困難に陥り緊急入院した後でした。

最初の意欲が高い時期には、誰から休めと言われても聞き流してしまうもの。しかし、どうか頭の片隅にでも置いておいてください。過度の練習は、毒でしかないということを。
また、トレーニングはストレスとレストの組み合わせ。ストレスに見合ったレストを取ることが非常に重要です。次回はレストについての章を解説します。

TTB解説(10):疲労回復の知識と実践(前編)

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