高強度練習が先「リバース・ピリオダイゼーション」での組み立て方
年間トレーニングの組み立て方についてです。
6月にメインレースを置いていて、1月からのトレーニングメニューを設計する例。
一番ベーシックな形が、1月~3月を「基礎期」として低負荷長時間の持久練習をメインにトレーニング時間を増やしていく時期、4月5月を「強化期」として強度を上げて主にLT向上を目指していく時期、6月がテーパリング、という「古典的ピリオダイゼーション」のパターンでしょう。
私もロングのトライアスロンを始めてから5年間この形でトレーニングメニューを組んできました。数年成果がでないまま過ごしましたが、2017年はうまく体力を構築していけてピーキングも上手く行き、目標を達成することができました。
しかしながら、いくつか問題がありました。
私は持久力には長けているのですが、強度を上げた練習がとても苦手。いつもこの古典的ピリオダイゼーションでやっても強化期のボリュームをこなすことができないのです。
また、2017年はTSS(トレーニングストレス)ベースでトレーニングを組み立てたのですが、持久系練習が得意なため基礎期に計画以上のTSSを積めてしまい、強化期の数値が上がりにくくなってしまう、という問題が発生しました。(基礎期に計画以上に体力値が上がってしまうため同じTSSの運動をしても体力値が上がりにくくなる)
それゆえ、高強度の練習の間に回復を挟みにくくなってしまい疲労が抜けにくくなりました。
もちろん、数値に拘るのではなく身体の調子と相談しながらアレンジしていくのが前提ではありますが、このパターンを来年に当てはめても同じ問題が発生すると思えるのです。
そこで、予算が低めの基礎期の時期(1~3月)に高強度+たっぷりの回復でゆっくりと体力を積み上げ、予算が高くなる強化期の時期(4月~5月)に中強度長時間の持久練習で持久力をつけていく方法がいいのではないかと思いました。
いわゆる、「リバースピリオダーゼーション」です。
Training Peaksのサイトでリバースピリオダーゼーションについて解説がなされています。
https://www.trainingpeaks.com/blog/reverse-periodization-for-triathletes/
Reverse Periodization For Triathletes | TrainingPeaks
ここでは北欧の選手を例にとり、「冬場は屋外でのトレーニングが困難」であることが前提になっています。そのような環境では、「冬場は低負荷長時間でベーストレーニング」という従来のピリオダイゼーションスタイルは適用しにくい。何時間もローラー台やトレッドミルで低負荷の運動をし続けることになるわけですからね。
日本においてもこの例が当てはまる地域は多く、そのためロングのトライアスリートは比較的南部に集中しているように思います。
これを解決するための一つの策が「リバースピリオダイゼーション」。冬場の厳しい時期に室内での高強度トレーニングでFTPを上げ、温かくなってから持久練習に切り替えていくトレーニングプランです。
私の感じた従来のピリオダイゼーションの問題とは全く違うところから生み出されているのですが、行きつくところは同じなので参考にしてみたいと思います。
以下のページで、従来型とリバースピリオダイゼーションの違いや利点欠点について分かりやすくまとめてありました。ざっと訳します。
https://www.trainingpeaks.com/blog/reverse-vs-traditional-periodization-for-triathlon-training/
Reverse vs. Traditional Periodization for Triathlon Training | TrainingPeaks
従来のピリオダイゼーションではこのような組み立て方をします。(画像はリンク先より)
基礎期に基本的な能力(筋力、持久力、技術)を構築し、強化期にレースに特化した体力を構築していきます。具体的には、準備期と基礎期で低強度持久トレーニングを完了し、強化期とピーク期にはより高い強度のトレーニングの量が増えるようになっています。
<利点>
・怪我のリスクを最小限に抑えながら、徐々に有酸素能力を向上していくころができる。
・比較的低強度で長時間の有酸素トレーニングを行うため、深いレベルで有酸素能力を構築できる。
・それにより計画の後半にハードなトレーニングを吸収できるベースが形成できる。
<欠点>
・夏季のレースに向けては、基礎期が冬場になる。これは冬場のトレーニング環境が厳しい地域においては困難となる。
・寒さと雪・凍結による危険性があり、特にバイクのトレーニングが非常に困難。
・70.3かフルIRONMANを目標としている場合は、強化期とピーク期に徐々に有酸素的バイクトレーニングとラントレーニングを長くしていく必要がある(おかん注:レース特化、という理由だと思います)。これが高強度トレーニングの適用を難しくし、バイクのパワー向上を阻害してしまう可能性があります。
一方のリバースピリオダイゼーションについては以下の通り。なお、ダニエラ・リフとニコラ・スピリグにもこのアプローチを適用したと書いてあります。
リバースピリオダイゼーションは、冬の間はバイクとスイムの短時間高強度トレーニングに焦点を当て、レースに近づくにつれて長時間の有酸素トレーニングを重ねるというものです。
このアプローチは、特に冬の練習が厳しい環境に住んでいる選手について適しており、夏の70.3またはフルIRONMANのレースを目標としている場合で、有酸素トレーニングの基本レベルを確立している場合に適す、としています。
<利点>
・冬場にはバイクの短時間高強度トレーニングを行い、バイクのFTPを向上する。
・冬場のランニングは全て低強度に抑え、怪我のリスクを最小限にします。
・目標レースが近づくにつれて、トレーニングをより長時間に、よりレースに特化したものにしていきます。
・日照時間が増えるにつれて長時間トレーニングが増えるように設計されています。
<欠点>
・目標レースからまだ遠く離れた期間に高強度トレーニングが集中しているため、燃え尽きが発生して強度の高いトレーニングを行うことが困難になるかもしれません。
・冬の間に「できあがっている」と感じるかもしれません。 目標レースのためのピークが早く来すぎたと感じることがあります。
このように、「冬場はバイクのFTP向上に集中する」ことは、心肺機能を向上できるほかランの筋肉や腱・靭帯を強化することにも役立ちます。この時期を経て、春にバイクを持久力トレーニングに移行、そして強化された筋肉を持ってランの練習に移行していきます。
このプランにより、ランで故障しにくい身体を作ってから走り込むことができるわけです。
実際にこのリバースピリオダイゼーションで設計したATP(年間トレーニングプラン)の例です。
(このATPは時間ベースで作成されています。)
従来、基礎期の形である3週続けて時間(もしくはTSS)を増やす階段パターンが強化期の時期(3月~5月)に、強化期のパターンである時間(もしくはTSS)を一定にして強度にフォーカスしていくパターンが基礎期の時期(1月~2月)に来ています。
いきなり強度の高いトレーニングを3週+1週レストパターンで適用せず、2週ビルド+1週レストを2セット、3週ビルド+1週レストを1セットで組み立てています。これは参考になりますね。
しかし問題は、TrainingPeaksのアスリート用機能では、これに対応したメニュー作成が自動的に出来ないということです。ひとつひとつ手作業で設定していく必要があります。
「Automatic」にした場合は従来のピリオダイゼーションの形になってしまいますので、「Manual」にして1週1週手作業で設定していきます。
例を参考に作りなおしてみました。
レース週から遡って設定していくと間違えにくいです。
来年はこれでやってみようと思います!同じようにリバースピリオダイゼーションで組んでいる方、是非情報交換させてください(^_^)
Triathlete Training BibleとTrainining Peaksについては、昨年秋~冬に書いた連載記事をご参考ください。
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