TTB解説(3)トレーニングの基礎知識(後編)

トライアスリートトレーニングバイブル解説 トレーニング研究

第3回の後半です。
前半はこちら。

前半ではトレーニングの原則についての解説までまとめました。ここからは具体的にトレーニングを設計する要素に落とし込んでいきます。
用語の定義や要素についての概要説明なので少し退屈なのですが、トレーニングの計画や設計をする上で理解しておくべきことなので、さらっと読んで頂ければと思います。

原本はこちらからご購入下さい。英語のみですが、このブログで概要を知り、興味がある部分だけGoogle翻訳などで訳して読めばいいと思います。

3つのトレーニング変数「頻度・時間・強度」

経験者であっても初心者であっても、トレーニングの負荷を決める要素はたった3つです。頻度・時間・強度。どれだけ頻繁にやるか、どれだけの長さの時間やるか、どれだけの強さでやるか、です。

頻度(日に何回やるか、週に何回やるか)

一般的に、プロトライアスリートは日に2-3回、週に18-20回のトレーニングを行います。プロはもう向上の余地が少なく1回の練習で引き上げられることが限られているので、頻繁にトレーニングしないといけないからです。
初心者は1日1回、多くて1週間に7回でしょう。初心者は週に数回の練習だけで十分に大きな進歩や改善を見せることができます。
ではあなたはどれくらいの頻度でやればいいのでしょうか?

それは、あなたの生活スタイル次第。仕事や家庭や他の趣味で忙しい日々の中に練習を取り入れるのは容易なことではありません。最もいいのは、限られた貴重な自由時間を最大限に活用することです。適切な時間に適切な練習をすること。そうすればトレーニング機会を損なうことがありません。だらしなくならなければ全ての練習をこなすことができるのです。そのためには、トレーニングの詳細な計画を立てておく必要があります。

トレーニング計画なんて立てなくていい、と言う方は、自分を律することができる方なのでしょう。
そうでない方は、自由な時間を「だらけてしまうことなく」トレーニングに使えるように、当てはめておくのがいい。
これが私がトレーニング計画を立てる理由です。そう、私はサボる生き物なのだ(笑)

時間(一回にどれだけの長さの時間やるか)

トレーニングは距離ではなく時間で測るべきです。距離で考えてはいけません。トレーニング強度は時間によって変化させるべきだからです。10㎞を30分で走るランナーと60分で走るランナーでは、10㎞という距離の練習の強度は同じではありません。しかし、「30分全力で」とい言えばその強度は同じになります。

強度は常に時間と関連づいています。これは。一方を増やせば一方を減らす、ということです。レース時間やトレーニング時間が長くなれば、維持できる強度は下がります。

「月間300km」などという方法では管理できない、ということです。

強度(どれだけの強さでやるか)

始めたばかりの初心者は、トレーニング頻度だけに焦点を当てる必要があります。トレーニング時間の長さや強度を気にせず、頻度に重きをおいて練習していれば、初年度に素晴らしい成長を遂げることができるでしょう。
始めて2-3年のトライアスリートは練習の量を増やすことを考えるべきです。そして、始めて4年になったらトレーニング強度に重きを置いていくべき時です。そうすれば、頻度や量を増やすよりも可能性を大幅に増やすことができます。

残念ながら、依然として多くのトライアスリートが長時間練習こそが成功のカギだと思ってそこに夢中になってしまいます。強度は測るのが簡単ではありませんし専用のデバイスも必要ですが、高いパフォーマンスを達成したければ強度の適切な扱い方を知らなければいけません。

私はまさにこの通り、「1年~3年は時間管理で、4年目から強度管理」にシフトしました。パワーメーターを買ったことが転機になりました。
パワーメーターがなくとも、GPSで速度を計って強度を管理することができます。

以下はこの3つの要素を組み合わせた考え方や言葉の解説です。

量(ボリューム)

トレーニング量は「頻度」と「時間」の組み合わせです。単純に週のトレーニング時間を足せば量になります。

量は測りやすいですが、経験を積んだアスリートにとっては強度こそが成功のカギです。経験者や高いレベルのトライアスリートは、練習の40%を量に、60%を強度に割り当てるといいでしょう。これは、「強度を重視すべき」だということで、高い強度の練習をすべきというわけではありません。様々な強度があり、それは「ゾーン」と呼ばれています。どのゾーンで練習すべきかは、何のトレーニングをするかや個別のニーズ、トレーニングの「期」などによって変わります。

dose(用量)とdensity(密度)

レースでベストパフォーマンスを上げたければ、トレーニングでは適切な量と強度を重視しなければいけません。ここから「用量と密度」の概念がもたらされます。
(doseに適した日本語が見つかりませんが、トレーニング量を薬の服用量にとらえたものと考えてください。読みは「ドーズ」。麻薬の服用量超過を「オーバードーズ」といいますが、そのドーズです。トレーニングが身体にとって薬であるという風にとらえると理解しやすいと思います。)

用量は時間と強度の組み合わせです。練習をどれほどハードにするかということです。とてもハードなトレーニングは「high-dose(高用量)」です。例えば長い時間のトレーニング、ロングスイムやロングライドやロングラン。もしくは、インターバルやヒルリピートのような高強度のトレーニングがこれに当たります。「low-dose(低用量)」トレーニングは、低い強度で短い時間のトレーニングです、

密度とは、高用量のハードなトレーニング同士をどれだけ近くに配置するかということです。「高い密度のトレーニング」とは、ハードなトレーニング同士がとても近いということで、連続しているか1日しか離れていないような配置の仕方をさします。逆に「低い密度のトレーニング」とは、ハードな練習の合間に低い用量のイージーなトレーニングが挟まっているということです。

レースの特性によって用量は似通ってきますが、密度については同じレースに向いているアスリートでも様々です。例えば若い選手は高密度でトレーニングしますが、年齢が高い選手は密度を下げてハードな練習の間にイージーな練習を挟むでしょう。

この用量と密度という概念は聞いたことがないかもしれません。しかし数年真剣にトレーニングをしていたなら、知らずともこの方法を取り入れていたはずです。

 

トレーニング負荷

「量」と「強度」を組み合わせたものは、負荷と言われます。高強度のインターバルを数回含む週20時間もの高い負荷のトレーニングをこなせる人もいますが、ほとんどの人は高強度練習は週に1回か2回です。

これらも個別性の原則ですが、ライフスタイルにも関係します。仕事の時間が長くトレーニングに利用できる時間が短い人はトレーニング負荷が低くなりがちです。このような生活の要素は「量」に関係します。時間の制約で「量」が減っている時には、「強度」を増やして負荷を維持し、高いパフォーマンスを達成できるようにすべきです。

 

超回復について

トレーニング負荷を増やすと疲労も高まります。ハードな練習の間に休養やリカバリーの日を挟むことによって、身体は適応していきます。
もし高い用量と高い密度のストレスをかけリカバリーをしなければ、待っているのはオーバートレーニング症候群です。逆に、低い用量の練習だけで頻繁に休養していると、一向に体力を向上させることができません(過負荷の原則)。
この負荷と休養によって起こる体力の向上を「超回復」と言います

「超回復」の能力を高めることはできません。自然の兆候よりも早めることはできないのです。早い人もいれば遅い人もいますが、生まれつきのものです。体力を改善させようとしてオーバートレーニングに陥ってしまうことを避けるためには、身体の反応に注意を払い、決して急ごうとしないことです。

レースのためのトレーニングは「体力・疲労・調子」のバランスが重要

トレーニングの目的が「レースの目標を達成するために体力を向上させること」である場合には、これから説明する3つの要素のバランスを考えていかなければいけません。
「体力」と「疲労」と「調子」です。
※それぞれ、TrainingPeaksの「CTL」「ATL」「TSB」に対応しています。

体力(Fitness)

レースに向けての体力の成長を評価づけるにはいくつかの方法があります。
①レース後にレース結果で判断するのが絶対的な方法ですが、レース前に進捗を確認するには使えません。
②原始的な方法として、練習内容とその時の感覚をノートに取る方法があります。
③客観的なフィードバックが欲しければ、評価施設でのテスト(アシックスラボのような)をシーズン中数回に渡って行うという方法もあります。
④提案したいのは、トレーニング負荷を計測して集計し、週ごとに比較するというものです。②の原始的な方法の「感覚」に数値を適用したものです。トレーニング負荷が増えていればそれをこなせる体力も増えているということなので、トレーニング負荷を計測することは、体力の増加を間接的に計測することになるのです。

④は例えばこのような方法です。心拍計を付けてトレーニングし、ゾーン別の実施時間をソフトウェア(ガーミンにもポラールにも機能があります)で算出します。ゾーンの数字と実施時間(分)をかけて、それを合計したものがその練習の点数になる、というものです。
例)ゾーン1が15分、ゾーン2が10分、ゾーン3が5分、ゾーン4が2分であれば、1*15、2*10、3*5、4*2、15+20+15+8で合計58点

心拍計以外にもGPSウォッチを使ったスピードゾーンやパワーメーターを使ったパワーゾーンで同じように計算することができます。

そして週の終わりにその週の合計点数を計算し、週で比較していくというものです。このような方法で負荷を数値化し比較することができますが、大変で時間がかかります。

もっと簡単にするにはトレーニング負荷を自動計算してくれるソフトウェアを利用することです。TrainingPeaksを使えばTSS(Training Stress Score)と呼ばれる広く使われているトレーニング負荷の点数化を自動的に行ってくれます。

はい、ジョーフリール先生の営業キマシタ(笑)
この本の考え方をシステム化したものがTrainingPeaksである、ということです。
TrainingPeaksを真に活用するためには、この本の精読が必須であると思います。

疲労(Fatigue)

トレーニング負荷を増やしていくと体力が増えていきますが、そこでは疲労も増えているはずです。一方でトレーニング負荷を下げれば疲労は下がりますが体力も下がります。つまり、体力と疲労は同じ傾向を示すのです。

しかし、疲労は体力よりも早く表れます。今日ハードなトレーニングをすれば、明日には疲労が現れるでしょう。しかし明日の体力の変化は測ることができません。疲労はすぐに変化し、体力はゆっくりと変化するのです。

調子(Form)

調子とは、身体がどれほどフレッシュであるかを意味します。疲労が高い時は体力がどんなに高くともいい調子とは言えません。体力から疲労を引いたものが調子です。

体力は疲労より遅く反応するため、レース前のテーパリングではこれを利用してレース当日に身体をフレッシュな状態に持って行きます。疲労を素早く減らし、体力はレース前に失われてしまわないようにします。

レースに向けて体力を向上させていくとき、トレーニングで負荷をかけると疲労も上がるため、調子は落ちます。しかし疲労を落として調子を上げようと負荷を下げすぎたり休養しすぎると、疲労は素早く反応するためすぐに調子は上がりますが、数日後から体力は落ちていき、レースに向けて体力を向上させるという目的を達成することができません。

このように体力・疲労・調子の3つの要素をうまく回し、最終的に一番重要なレースに体力を最大化し、テーパリングによってレース当日の調子を上げる、という考え方。トレーニング負荷を数値化するソフトウェアでトレーニング計画管理、疲労や調子の数値管理を行えるようになったことで、個別の能力や進捗にマッチしたトレーニング管理ができるようになったのです。

 

以上、第3回の解説でした。
ほぼ原則と用語の解説であったため、特に取り入れられる発見はなかったかもしれません。しかし、ここはしっかり理解して先に進んだほうがいいと思います(^^)

次回は「強度」について具体的に解説し、その基準となる「ゾーン設定」を行っていきます。

TTB解説(4)成果を出すためのトレーニング強度(用語解説編)

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