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レースの補給戦略、新常識!?糖は摂りすぎてはいけない!

フルマラソンやウルトラマラソン、ロングトライアスロン、4時間以上のエンデューロなど、長時間に及ぶレースではエネルギー戦略が非常に重要です。
無計画だと完走すら危ぶまれる状況になることも。

今回は、「トライアスロンを科学する会」にて投稿されている内容を元に、運動中のエネルギー供給の仕組みを整理することから始め、具体的な補給例まで、補給戦略の考え方についてご紹介していきます。

従来の「お腹がすく前に先に先に」「直前までしっかり摂る」「とにかく炭水化物を摂る」という補給の常識に反する内容ですが、もし今までそれでうまくいかなかった方なら試す価値があると思います。

多くのアスリートが実践する補給戦略の新常識、どうぞご参考下さい。

 

運動中のエネルギーについて

人が運動する時のエネルギー源となるのは、糖と脂肪です。どちらをどれくらい使うのかは、運動強度によって変わります。

歩行のような強度の低い運動では、ほぼ脂肪。数秒の全力走など非常に強度の高い運動ではほぼ糖。
私達がやっている持久系スポーツでは、糖と脂肪の両方を使って運動します。

強度が低い運動の方が脂肪を使います。「脂肪を減らしたければハアハアしない運動がいい」と言われるのはそのためです。

 

エネルギー源としての糖と脂肪の特徴

糖はエネルギーになるために必要な酸素量が少ないため、素早くエネルギーを生み出すことができます。

しかし、身体に蓄えておける糖の量には限界があり、成人男性で肝臓に100g、筋肉に300g程度です。糖1gは4kcalなので、最大400gを使用できたとしても1600kcalの運動しかできません。
しかも、脳のエネルギー源は糖しかないため、体内の糖の量が一定量以下に下がると意識が朦朧とするなど運動どころではなくなります。

一方で、脂肪は身体に潤沢に蓄えられています。極端に体脂肪を削り取った人ですら体重の5%程度はあり(50㎏で2.5㎏)、脂肪1gは9kcalなので、それだけでも22500kcal分の運動が可能です。

しかし、脂肪はエネルギーに変わるために多くの酸素を必要とし、エネルギーに変わる速度も糖ほど速くありません。

 

補給戦略は運動内容で決まる

もし、出ようとしているレースが10分で終わるスプリントレースであれば、100%糖をエネルギー源としても不足することはありません。エネルギーに変わりやすい糖を使って高いパフォーマンスを発揮します。
事前の補給も、運動中の補給も必要ありません。重くなるだけです。

しかし、体内の糖を使い切ってしまうような長さの運動であれば、糖の使用量を減らすか糖を補充するかしてレースを最後までやり切れるようにしなければいけません。フルマラソン、長時間のエンデューロレースなどです。

 

レースの所要時間だけでなく「運動強度」も大きな要因となります。

常にハアハアする非常に強い運動強度であれば、エネルギー源の多くは糖が使われます。
仮に補給せず使える体内の糖の量が250g(1000kcal分)だとすると、計算上は、ランニングだと65㎏の人が時速14.5㎞で走れば1時間で消費してしまいます(Metsで計算)。
自転車では機材の差もあり一般的な計算ができないのですが、最大心拍数の95%以上で1時間も走れば消費してしまうでしょう。

逆に、非常に長いレースであっても、おしゃべりをしながらゆっくり走るような運動であれば糖の使用割合は低いので、1000kcal分を消費しきるのは随分先になるということになります。

 

このように、補給戦略はレースの所要時間と運動強度によって決まります。

では、補給が必要な時間と強度のレースに出る場合の補給戦略について考えていきましょう。

 

レース中の補給には限界がある

多くの人は、「レースで消費するカロリーが〇kcalだから、その分の補給食がいる」という考えから始まり、「いや、身体にもあるからその分は引いて」や「脂肪も使えるから消費カロリーの8割くらいで」などと計算し、その分のカロリーの補給食を用意しようとします。私も、トライアスロンを始めたころはそう思っていました。

しかし、人間の身体が糖を摂ってそれをエネルギーに変えられる量には限界があり、1時間あたり60g程度とされています(60g=240kcal)。もちろん消化吸収してからエネルギーになるため、摂ってすぐ動けるわけでもありません。

また、運動中は酸素を筋肉で多く使用するため、消化器の血液量が減り消化機能が格段に落ちます。長時間レース中に、胃のトラブル(吐き気、胃痛、嘔吐など)が起こったことがある人は、「補給のし過ぎ」であることも少なくありません。(もちろん他の原因もあります)

長時間に及ぶレース中は「補給に頼るのではなく、体内のエネルギー源を最大限に活用する」ことを重視した方が、DNFに繋がりやすい内蔵系のトラブルを回避することができると思うのです。

 

糖を使い切らないようにするには

補給に頼らず体内のエネルギー源を最大限に活用するには、体内の糖を使い切らないようにすることが必要です。

ひとつの方法に、「事前に体内の糖の量を増やしておく」というやり方があります。いわゆる「カーボローディング」というもので、レース3日ほど前から食事を炭水化物中心に変えることで、一時的に体内の糖の量を増やしておくという方法です。

この「カーボローディング」は確かに一定の効果があると思います。
特に普段から低糖質食を実践している人には、身体に力がみなぎりバテるのが遅くなったと感じされるかもしれません。

しかしカーボローディングをして増える体内の糖量はわずか。最大でも1.3倍程度とされ、300gが400gになる程度です。カロリーにして400kcal分ですから、30分や1時間、糖の枯渇を先送りにできるくらいでしょう。
なお、糖はその3倍の水分を捉えるため、100g増えると体重は400g増量となります。それがマラソンやヒルクライムでは不利になることもあるでしょう。
また、カーボローディングをして胃腸の不調に陥ったことがある人も多いのではないでしょうか。レース前に下痢や便秘をしたり、レース中に便意をもよおしたりと、リスクも大きいように思います。

あくまでも、「レース前に体内の糖の量を減らさない」よう、低糖質食を止めて通常とるべき量を摂る、程度でいいのかなと私は思っています。

それよりも影響が大きいのは、レース中の糖の使い方です。
それによって、エネルギーの「持ち」は大きく変わります。

 

どうやって糖を節約するか

糖を節約するためにはいくつか方法があります。

1)糖の利用割合が低い強度を保つ
2)糖の利用割合が低い体質に鍛えておく(脂質代謝化)
3)糖の利用割合を低くする食品を摂る
4)糖の利用割合が高くならないよう補給量を保つ

1)糖の利用割合が低い強度を保つ
前述したように、運動強度によってエネルギー源の割合は変わります。

個人差は大きいのですが、一実験結果では、
・運動強度50%では糖と脂肪が50:50、
・運動強度90%では糖と脂肪が75:25
で使用されていることが分かりました。
最大心拍数185、安静時心拍数50で計算した場合、心拍118が運動強度50%、心拍172が運動強度90%です。

ここまで極端ではなくとも、運動強度75%(心拍数151)と運動強度85%(同165)では糖の利用割合は10%違います。
レース中の心拍数を管理し、適切な運動強度に保つことは、糖の節約に非常に効果があると考えられます。

序盤に力強く飛ばして抜いていった人が、ハンガーノックでヘロヘロになって落ちてきたり、内臓の不調で嘔吐してDNF、などはそう珍しいことではありません。練習で適切な強度を把握し、レース中もそれを維持する、ということは、長い時間のレースにおいては補給戦略にも大きく関わってくるのです。

2)糖の利用割合が低い体質に鍛えておく(脂質代謝化)
上に「個人差は大きいのですが」と書きました。糖の利用割合は個人差が大きいのです。
そしてそれは鍛えることができます。

体内の糖が少ない状態で運動を続けると、身体は糖を節約するようになります。
朝食前の運動習慣がある人は、夕食後や睡眠中で糖の量が減った状態で運動しているので脂肪を利用する体質化が進んでいる可能性があります。
また、運動時間が長い場合も運動の後半では糖の量が減った状態となっており同様の効果があると思われます。
なので、脂質代謝化という意味では、1時間の運動を2回よりも、2時間の運動1回の方が効果的であると言えます。

他にも、普段の食事で糖を摂りすぎない(低糖質がいいと言っているわけではありません)、運動の開始時のアップを時間をかけて行う、なども脂質代謝化に有効であるようです。

3)糖の利用割合を低くする食品を摂る
運動前に摂取すると、脂肪を燃やして運動できる!と謳っている商品があります。実際にあれを飲んで「バテなくなった」と感じている人もいるようです。

しかし、私がこの食品よりももっと明らかに「バテなくなった」と感じたのは「無水クエン酸」です。石橋剛さんのクエン酸研究を知り試したところ、すぐに効果を実感できました。
高いものでもないので、毎日運動前に摂取しています。もちろんレース前にも飲みます。

石橋さんが実験しているデータでは、運動前にクエン酸を飲んだグループと飲んでいないグループで、糖の利用割合に明らかな差が見られています。クエン酸を飲んだことで糖を節約して運動できているから体内の糖が減るのが遅くなって、「バテなくなった」ということだと思います。

具体的な飲み方は、こちらをご参考下さい。

いずれにせよ、レース本番だけ飲むことはお勧めできません。(胃が動くので便意を催したりしますし)
普段の練習から試しておくべきだと思います。

もうひとつ大事なポイントがあります。
クエン酸を飲んだら、運動開始まで糖を含む飲食をしないこと。最適なのは「水だけ」です。

次で説明します。

4)糖の利用割合が高くならないよう補給量を保つ
低糖質ダイエットの仕組みをご存知でしょうか。
糖質を摂ると、それを消化吸収し血糖値が上がります。身体は、上がった血糖値を適切にしようと血糖値を下げるホルモンを分泌します。「インシュリン」です。
このインシュリンは肥満ホルモンとも呼ばれ、身体の脂肪利用を抑制します。なので、糖の摂取量を減らして血糖値をあげないようにし、脂肪を利用して活動することで脂肪燃焼を狙います。

実は、これが補給戦略にも大きく関わっています。

インシュリンにより脂肪利用を抑制する、ということは、逆に言えば「糖を積極的に利用するようになる」ということです。運動中であっても、糖を大量にとって血糖値を上げてしまうことは、糖の枯渇を早まらせる原因になってしまうのです。運動中は平常時よりも血糖値は上がりにくいと言いますが、私が練習中に補給と血糖値測定をした結果では、糖たっぷりの補給後はしっかり血糖値は上がっています。

「運動中は糖を含むものをたっぷり摂る」のは、逆効果なのです。
補給はできるだけ頻回にわけ、少量ずつ、血糖値を上げないように摂る必要があります。

また、これは糖の節約とは関係ないのですが、血糖値は急激に上がると急激に下がります。その急激に下がるときに、血の気が引いたり、眠くなったり、冷や汗をかいたりすることがあります。これはインシュリンショックと呼ばれ、運動どころではなくなります。
レース前に食べておかないと、とスタート直前に大量に食べている人を見かけますが、気をつけてください。スタート1時間前からは水だけ、がいいのです。

十分に脂質代謝化している人などは、ロングレースであってもほぼ補給をしなくても済む人もいます。ですが一般的には、2時間を超える運動では血糖値が下がってきて運動のパフォーマンスが落ちてしまいます。

なので、血糖値を上げも下げもしない適切な糖の量を知り、それをレース中も守ること、が最適な補給戦略であると考えます。

 

実際、どれくらい摂ればいいのか?

以下、一例です。個人差や運動強度差が大きいので必ず試してから実戦投入してください。

私だと1時間に30g程度が適量。ショッツやパワーバー1個分です。
ただし、一気に飲むと血糖値が上がってしまうので、小分けにして飲めるように工夫しています。

バイクではエネルギー補給用のドリンクボトルを1本用意し、ゴールまでに必要な量の糖を水に溶かします。6時間なら180gの糖(私はマルトデキストリン、安価な「粉飴」を活用)です。そのままでは飲みにくければ、塩やクエン酸で味付けをしたりOS-1で溶かしたりします。

マルトデキストリンは消化吸収時間が少し遅いので、これとは別に吸収が速いブドウ糖を1時間に1つ(3g)持っています。

ランは同じくボトルかジェル。ジェルはキャップが付いていて分けて飲める物を使います。ピットインかワンセコンドを使っています。

他の物でもジェルフラスクに入れれば小分けで飲めますが、少し薄めないと非常に飲みにくいですね。

不安であれば少し多めに持っておいてもいいとは思いますが、最大でも1時間当たり60g。それ以上は吸収して利用することができず、胃に負担をかけるだけのただの重りになってしまいます。

実際のレース投入例で言いますと、

【ロングトライアスロン(レース時間約13時間)】
・レース4時間前の朝食、以降水のみ
・レース30分前にクエン酸3g
・スイム(1時間)無補給
・バイク(7時間)粉飴210g、ブドウ糖3g×7個、ココナッツオイル5g×3個
・ラン(5時間)粉飴150g、ブドウ糖3g×4個、ココナッツオイル5g×1個

【フルマラソン(レース時間約4時間)】
・レース4時間前の朝食、以降水のみ
・レース30分前にクエン酸3g
・スタート90分後から補給開始
・2時間でザバスピットイン2個を6~8回に分けて飲む

この内容にしてから胃のトラブルやハンガーノックが起こったことはありません。
また、非常に低コストになったのでレース中の内容を練習時からどんどん試すことができています。

 

以上が、「トライアスロンを科学する会」石橋剛さんの研究等から得た知識を元に、私が自分の身体を使って練習やレースで実験してきたことから得た結論です。

あくまでも私の考えで、どなたにでも合うというわけではないでしょう。
「固形物がないと力がでない」
「レース中もおにぎりが最強」
という方もたくさんいらっしゃるので、胃が強くてうらやましいなあ、と思っています(笑)

どうぞご参考にして頂いて、練習でしっかり実験やシミュレーションをしてからレースに活用頂ければと思います。

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