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書評:「渥美半島の風(創刊号)」(著:トライアスリート八田益之氏)

ここでは初(たぶん最初で最後)の書評です。敬愛する東大卒トライアスリート八田益之氏が、愛知県の渥美半島の先端、伊良湖岬で行われている伊良湖トライアスロンを題材として、その運動哲学やトップアスリートの技術を惜しみなく書き記した随筆文について取り上げます。渥美半島の地域誌「渥美半島の風」創刊号に掲載されています。


トライアスロンというスポーツは、もちろん学生時代から取り組んでいる方もおられますが、多くは社会人になってから、しかも40代に突入してから始めています。ダイエット目的でランニングやロードバイクを始め、仲間に影響されて、関連情報を目にして、という入り方が最も多いのではないでしょうか。

昨今の忙しい社会人が新たな何かを始めるとき、まずやることはネットでの情報収集でしょう。何がいるのか、どう練習すればいいのか、レースにはどうやって出るのか。トライアスロン情報サイトとしてまとまったサイトもいくつか存在しますが、まだ専門誌も1誌しかない狭い世界、参考となるのは先輩トライアスリートの声が詰まった「ブログ」です。

トライアスリートとして経験を積んでいく中で、より効率的に、より効果的にパフォーマンスを上げたい、と練習方法やトレーニング理論を探索していると、八田氏のブログに到達します。更新頻度もそう高くない彼のブログが検索上位に上がるのは、「トップトライアスリートがそのトレーニングや運動技術を解説する」という世界において群を抜いた情報密度と、比較的知的レベルが高い傾向のあるトライアスリートを刺激するその難解な文章が、多くのトライアスリートから人気を博しているからでしょう。

しかし八田氏の文章は一度読んで理解できるものではなく、多くの人が「これは非常に重要なことが書かれている匂いがする」と感じながらも、読解を諦めてしまう難易度。ご本人が認めていらっしゃる「未踏の深海にダイブする系の文章」(笑)。氏のブログは、自分の知識や経験を総動員し翻訳できる人だけが理解できる魔法のトレーニング解説書なのです。

そんな八田氏が紙媒体に落とした随筆文。しかし地域誌への寄稿となればその内容は該当レースのレポートや地域への想いなどに範囲は限定されるであろう、と入手に至っていないファンも多いのではないでしょうか。私も自他ともに認める熱心な八田ファンでありながら、その考えから入手が遅れました(笑)

ところがどっこい、開いて読み進めてみればすぐに裏切られます。伊良湖のレース中の回想から始まる文章に突如出てくる「ランニングとは重心のコントロール技術を競うものだ。」の一文。出た(笑)そこから先は、レース回想はどこへやら、ランニング技術、原理の解説のオンパレード。コーヒーを飲みながら気軽に読んでいた私、すぐにコーヒーを蛍光ペンに持ち替え、顔を20㎝近づけて真剣に読む姿勢に変わりました。ランニング技術解説、レーステクニックやその根底にある原理。いつもの八田氏のブログを凝縮したような内容ではないか。

氏が30代後半でトライアスロンを始める「トライアスロンってなんかすごそう。自転車だけよりかっこいいかも。」という我らとなんら変わらぬきっかけに驚いたりしながらも、先の回想の翌年のレースを追いながら今度はスイムの技術やレーステクニックの解説。八田氏は学生時代に競泳の経験があるようですが、スイムの解説は競泳ではなくトライアスロンスイムに特化、しかも実戦で生きる技術や大人から始めた人にも習得しやすい方法が解説してあり、スイムに苦労している人は縋ってみる価値があると思います。そしてバイクの意識解説と改めてランの技術解説を含めながら、レース回想フィニッシュ。

それだけでも十分に役立つ技術解説書と思えましたが、最後の<トライアスリートの身体哲学>の項にやられた。

トライアスロンという競技の本質は「中途半端さ」にあると思う。限られた時間のなかで、3種目すべてを極めることはできない。1つのトレーニングを選ぶということは、残り2つを高める機会を捨てるということであり、トレーニング自体が妥協を内包しているともいえる。だから、その競技者であるということは、「中途半端さを常に受け入れる」ということだ。妥協の連続であるトレーニングを日々繰り返しながら、結果として目指す成績に結び付ければいい。

マラソンから始めトライアスリートとしては5年目、常に「マラソンの競技成績」との呪縛に悩んできた私にとって、心が消毒されるような一文でした。そう、中途半端さを受け入れて、結果として目指す成績に至ればいいのだ。そうだ、中途半端でいいのだ。

読了し、知的好奇心が満たされた気持ちを味わいながら気づく。「あれ?一回で読めた・・・」そう、何度も何度も一文を読み返さなければ読み進めることができないはずの八田氏の文章なのに、戻ることなく読み進めることができたのです。ブログの「未踏の深海にダイブする系の文章」は、プロの編集者の手によって先に翻訳され、読み手はいつもの苦労をすることなくその哲学や解説を享受することができます(笑)それだけでも、紙媒体を止め全て電子書籍を選択している人が久しぶりに手に取る価値のある誌ではないでしょうか。

地域誌の寄稿文でありながら、その実、トレーニング哲学と技術の分かりやすい解説書。八田氏のブログから何かをつかみ取りたいと思ったことのあるすべてのトライアスリートに。

「渥美半島の風」(創刊号)
巻頭「潮騒のなかの祝祭~あるいは究極の身体マネジメント~」著者:八田益之

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「渥美半島の風」(創刊号) 発行:「渥美半島の風」社/ 価格:¥1,000/ 発売時期: 2016年07月

一般書店での取り扱いは限定的。こちらの販売サイトにて送料込み1100円で購入できます。
https://spike.cc/shop/user_3351773961/products/Z2ynofYL

 

オンラインでは仲良くさせて頂いてます(と私は思ってますw)が、まだお会いしたことはありません。お会いする機会を得られた時には本誌とサインペンを持参するつもりです(笑)
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  1. 丁寧な書評いただきまして!

    書いている僕自身が、その深さに戸惑うような、過去最深にダイブして拾い上げた1万7千字。
    書き上げて良かったです。

      • rumiokan
      • 2016年 10月 31日

      八田さん
      一時期、執筆活動中と仰ってたのはこれだったんですね!
      このようなスタイルの技術解説は新鮮で引き込まれました!
      技術や原理だけをうわばみのように取るだけでなく、八田さんの哲学を理解した上でこそ自身に取り入れることができるのだろうと思うので、完璧な構成だと思います。
      いいもの読ませて頂きました!私のバイブルになりますよ〜!

  2. これ書いてたのは年末年始で、今年いってたのは、その次のでしょうね。今回のはウォーミングアップです笑

      • rumiokan
      • 2016年 11月 07日

      >八田さん
      まだ続編があるんですね!(・▽・)
      楽しみにしてます~~~!!!

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